BOINCからWorld Community Gridに参加!最先端の科学研究に貢献

World Community Grid の研究プロジェクト内容

World Community Grid (WCG) とは、世界中のPCの空き計算力を集めて科学研究に必要な計算に使うプロジェクトの一つです。
(WCGは医学系の研究プロジェクトがメイン)

計算結果はそれを必要とする研究者や団体の科学プロジェクトにネット経由で送信され、多くの参加者の計算を合わせることで大規模コンピューターとして機能します。

普段使っているPCの余剰計算力や余らせているサブPCの処理能力を使って、簡単操作で最先端の科学研究に貢献できる素敵なプロジェクトの一つです…!!

 

現在進行中のプロジェクト (2025/12/14時点:4つ)

World Community Grid では、複数の研究チームが異なる研究内容の研究プロジェクトを立ち上げており、ユーザーは好きなプロジェクトを選んで計算に参加できます。

(全て参加することも、特定のどれかに参加することもできる)

 

時期によって進行中のプロジェクトは変わっていきますが、現在参加可能な物は次のとおりです。

Mapping Cancer Markers
がんマーカーのマッピング

公式ページ:Mapping Cancer Markers

 

私たちの身体の細胞は、活動する中で常に様々な物質を生産し続けています。

そのため組織や血液を採取してその中の物質を調べることで細胞活動の様子を調べることができ、この調べる対象の物質 (生体分子) をマーカーと呼んでいます。

もし例えばがん細胞でだけ特定のマーカーの量が多いことが分かれば、マーカーを調べることはがんの有無や種類の判定に繋がります。

しかし実際にはマーカーはがんに限らず様々な要因で増減するので、特定のがんに関連するマーカーを探すには単一のマーカーとは限らず複数のマーカー量の組み合わせを調べる必要があり、その組み合わせの数は膨大です。

これを世界中のPCで分担計算して探し出そうというのが本プロジェクトです。

 

もし、特定のがんの種類や進行度と強く相関するマーカーのパターン (がんマーカー) が新たに見つかれば、次のようなことが期待できます。

  • 採血や組織の採取で、がんの有無や種類を判定でき早期発見につながる:(診断マーカー)
  • がんの進行や再発の可能性を予測し、高リスクながん患者を特定できる:(予後マーカー)
  • 特定の抗がん剤や治療法が効くかどうかを事前に予測できる:(予測マーカー)

 

自分のPCでがん治療の改善や個別化のための研究に貢献でき、多くの患者さんに役立つ可能性があるなんて凄いプロジェクトです…!

内容補足メモ (クリックして表示)
  • 解析対象のサンプルはがん患者と健常者の組織・血液
  • 対象のがんは肺がん・卵巣がん・前立腺がん・膵臓がん・乳がん
  • マーカーとして実際に解析対象にしているのは mRNA 量っぽい
    (研究結果の一覧見たら、シグナル分子というより遺伝子発現量を調べていたので)
    ↑要は、特定の種類のがん患者さんでだけ発現量が多い遺伝子の組み合わせが分かれば、それががんバイオマーカーとして機能しうる

参考:https://www.worldcommunitygrid.org/research/mcm1/details.s

 

 

Africa Rainfall Project
アフリカ降雨プロジェクト

公式ページ:Africa Rainfall Project

 

サハラ以南アフリカの暴風雨のコンピューターシミュレーションを実行し、実際の降雨データ、衛星データ、地上観測データと比較して改良を重ねることで暴風雨シミュレーションの高精度なモデルを構築するプロジェクトです。

暴風雨シミュレーションには膨大な計算が必要ですが、それを世界中のPCで分担計算して実現させています。

高精度なモデルがもし完成すれば、農家が作物の収穫量を最大化するための植え付け時期を判断する上で役立つ情報を提供できるようになります。

 

暴風雨と付いていますが降雨量が非常に限られている地域ではむしろ最も重要な作物用水源であり、灌漑設備の無い地域で暴風雨のタイミングを逃さず利用するために降雨予測が利用できれば非常に有益です。

2025年7月時点で降雨シミュレーションは現在約3分の2が完了しているとのことなので、このプロジェクトに参加すれば完成に向けて大きく貢献できます。

参考:https://www.worldcommunitygrid.org/about_us/article.s?articleId=824

 

 

OpenPandemics - COVID-19
オープンパンデミック - COVID-19

公式ページ:OpenPandemics - COVID-19

 

新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスである SARS-CoV-2 について、治療薬開発の候補を探すために必要な分子モデリングシミュレーションを世界中のPCで分担して実行するプロジェクトです。

新型コロナウイルスのタンパク質に結合できる分子を見つけることができれば、その分子は新型コロナウイルスの増殖を抑制する治療薬の候補になりえます。

結合できるかどうかを数百万の化合物で一つ一つ実験するより事前にシミュレーションで結合可否を予測して結合できそうなものだけに絞り込めれば圧倒的に時間を短縮できますが、それでも計算リソースが必要になります。

World Community Grid でその計算力を提供しよう! というのがこのプロジェクトに参加する意義です。

 

現在は既に治療薬が複数実用化されている状態ですが、このプロジェクトにはもう一つの目的があります。

すべての科学者が将来のパンデミックの治療法を迅速に探すのに役立つオープンソースのツールキットを作成することもその目的で、このプロジェクトを通じて得られた・開発された全てのデータやツール、その過程は無料で公開されます。

つまり、2025年現在も計算への参加で意義のある研究に貢献できます。

参考(よくある質問):https://www.worldcommunitygrid.org/research/opn1/faq.s

 

 

Mapping Arthritis Markers
関節炎マーカーのマッピング

公式ページ:Mapping Arthritis MarkersAfrica Rainfall Project

 

乾癬 (免疫性の皮膚疾患) に合併する関節炎である乾癬性関節炎について、発症、進行、治療に役割を果たすマーカーの組み合わせの特定を目指すプロジェクトです。

乾癬性関節炎は痛みを伴うのみならず進行によっては手足の関節の変形を引き起こすこともある一方、現時点でこれを完治させる治療法は無いようです。

マーカー特定のため乾癬または乾癬性関節炎の患者の病変のある部分とない部分の皮膚サンプルから得た膨大な量のデータを分析する必要がありますが、そこを分散コンピューティングで担います。

(このプロジェクトは2025年8月に開始されたばかりでまだ計算タスクが降ってきていないみたいです。いつ開始されるかな…?)

 

 

World Community Grid への参加方法

ソフトの導入

参加するには PC に BOINC のクライアントソフトを入れるだけでOKです。

※BOINC:分散コンピューティングのプラットフォーム。World Community Grid を含め二十数以上の科学計算プロジェクトにこれ一つで簡単に参加できる。

 

BOINC の導入方法についてはこちらに画像付きで手順を説明しているのでご覧ください。
(インストールは手軽で10分もかからないです…!!) ↓↓

BOINC導入方法

BOINC (ボインク) とは、世界中のPCの空き計算力を集めて科学研究に必要な計算に使うための分散計算プラットフォームです。 PCに BOINC のクライアントソフトを入れると、バックグラウンドで科学プロジェクト(数学・天文学・医学[…]

※上記ページでは例として PrimeGrid という巨大素数探索のプロジェクトへの参加方法を説明していますが、World Community Grid に参加する場合は選択するプロジェクトを変更してください。

 

以下、プロジェクト選択から先の手順について記載します。

 

World Community Grid への参加

BOINC Manager ソフト画面から「プロジェクトを追加」ボタンをクリックする。

BOINC:プロジェクトの追加方法

 

プロジェクトの一覧から World Community Grid を選択して「次へ」

BOINCからWorld Community Gridに参加する方法:プロジェクトの選択画面

 

利用規約を読んだ後に「同意する」を選んで次へ。

 

アカウント作成画面になるので、登録したいメールアドレスとパスワードを入力する。
(既にほかのBOINCプロジェクト (PrimeGridなど) に参加している場合でも、アカウントは別々なので改めて新規作成する必要がある)

 

プロジェクト完了画面になるので、「終了」をクリック。

 

World Community Grid のログインページが立ち上がるので、先ほど登録したメールアドレスとパスワードを入力。

 

メンバー名・メールアドレス・国・先ほど登録したパスワードを入力して「保存」を押す。

 

この画面になれば、登録完了。

 

登録したメールアドレスに本人確認メールが届いているので忘れずに「Verify email address」をクリック。

(迷惑メールフォルダに入っちゃってた)

 

これでメールアドレス本人確認が完了。

 

 

BOINC Managerを見ると既に計算タスクが降ってきて計算が始まっている。

BOINCでWorld Community Gridの計算タスクを実行している画面

↑「タスク」のところを見ると今どのプロジェクトに参加しているかが分かる。

最初に Mapping Cancer Markers プロジェクトに割り当てられた。

 

参加するプロジェクトの変更

最初に紹介した4つのプロジェクトのうちどれに参加するかはサイトの設定画面から変更できます。

画面はこちら:マイ・プロジェクト

 

「使用可能なプロジェクト」欄で、参加したいプロジェクトの隣にチェックを入れて画面下の「Save」ボタンを押せばOK。

(デフォルトではこの3つにチェックが入っていた。注意書きにもあるようにタスクが降ってこないと手持ち無沙汰になることがあるので、基本的に複数プロジェクトの選択が推奨)

World Community Gridで参加するプロジェクトを設定する画面

 

自分の成績データの公開設定

参加した計算への貢献成績が記録されるのですが、それを自分のユーザー名と合わせて公開するかどうか設定で変更できます。

設定:Data sharing

↑ 公開したい場合は「Display my data 」を選択して Save。

 

自分の計算成績の確認

計算成績は World Community Grid の以下のページから確認できます。

リンク:Overview

 

計算を走らせてとりあえず最初に降ってきたタスクを終わらせたのですが、ページには反映されませんでした。

タイムラグがあるのかもです。しばらく待ってみます。

 

チームへの参加

World Community Grid ではチームに所属することができます。

所属すれば自分の探索成績がチームとしての成績にも反映されるので、チーム対抗戦みたいな感じで楽しく盛り上がれます。

チームといってもノルマとかきつい縛りがあるわけではないので、特に交流目的がなくても適当に気になるチームに入って大丈夫だと思います…!

(自分でチームを結成してフレンドと参加することもできます)

 

リンク:チームの検索

 

アクセスするとチーム検索画面になります。

一応、国を「日本」にして Search を押せば日本のチーム一覧が出てきますがチーム名だけ見てもどれに参加すればいいか分からないので参考情報を下記に記載します。

 

現在も活動している参加者数10人以上の日本のチーム↓

Wikipedia - World Community Grid - 日本のチーム(登録順)

 

UDがん研究プロジェクト(他の分散コンピューティングプロジェクト) で世界1位の成績を上げ研究に貢献した Team 2ch が有名なほか、ニコ動民やMIXI民のチームもあります。

(PrimeGridで私は BOINC@TOKYO というチームに所属しているので、World Community Grid でも BOINC@TOKYO で参加してみようと思います。

 

参加したいチーム名で検索をかけて、検索結果のチーム名のところをクリックします。

チーム情報ページで「Join Team」ボタンを押せばそのチームへの参加が完了します。

医学研究にPCの計算余力を寄付して人類に貢献! World Community Gridの始め方  ・がんの発見や診断に有用ながんマーカーの探索で治療法の開発に貢献 ・SARS-CoV-2治療薬の候補探索! ・暴風雨シミュレーションでサハラ以南アフリカの農家を支援
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