その際はタッチ操作で数式を横スクロールしてください
無理数同士を足し算・引き算・掛け算・割り算して有理数になる例や、無理数の無理数乗が有理数になる例など各パターンを一覧にしました。
※結論だけ先に知りたい方は以下の画像をどうぞ。
Pajoca (パジョカ)
はこの作品の全ての著作権および関連する権利をCC0により放棄しています。
2つの無理数の四則演算
演算 | 無理数? | 有理数になる例 |
和 + | 有理数にも無理数にもなりうる | $$\sqrt{2}+(-\sqrt{2}) = 0$$ |
差 ー | 有理数にも無理数にもなりうる | $$\sqrt{2}-\sqrt{2} = 0$$ |
積 × | 有理数にも無理数にもなりうる | $$\sqrt{2}\times\sqrt{2} = 2$$ |
商 ÷ | 有理数にも無理数にもなりうる | $$\sqrt{2}\div\sqrt{2}=1$$ |
このように無理数の集合は加法・減法・乗法・除法について閉じていません。
$\sqrt{2}$ 同士では差・積・商のいずれもが有理数になってしまいます。
( $\sqrt{2}$ と $-\sqrt{2}$ の組では和・積・商のいずれもが有理数)
絶対値が等しくない2数の場合
絶対値の等しい無理数の組はセコくない? と感じる(?)かもしれませんが、絶対値が等しくない2つの無理数の組でも和と積が同時に有理数になるものがあります。
$(2+\sqrt{2})\times(2-\sqrt{2}) = 2$
絶対値が等しくない2つの無理数の組でも積と商が同時に有理数になるものも。
$2\sqrt{2}\div\sqrt{2} = 2$
和と差がともに有理数になる2つの無理数の組は存在しない
(証明)
2つの無理数を $a,b$ とし、その和と差を $s, t$ とする。
\begin{cases}a+b=s\\ a-b=t \end{cases}
よって $2a=s+t$ だが、$s, t$ がともに有理数であるとすると $2a$ も有理数。だが $a$ は無理数であるため矛盾
$\therefore$ 2つの無理数の和と差のうち少なくとも一方は無理数 $\blacksquare$
和(0でない)と積と商がいずれも有理数になる2つの無理数の組は存在しない
(証明)
2つの無理数を $a,b$ とし、その和と積と商を $s, t, u$ とする。
$s, t, u$ がいずれも有理数であると仮定する。
\begin{cases}
a+b&=s & (s\neq0)
\\ ab&=t
\\ \frac{a}{b}&=u
\end{cases}
$t\cdot u= ab\cdot \frac{a}{b} = a^2$ なので $a^2$ は有理数。
$t\cdot \frac{1}{u}= ab\cdot \frac{b}{a} = b^2$ なので $b^2$ も有理数。
ここで、
a+b&=s \\
a&=s-b \\
a^2&=s^2-2sb+b^2 \\
b&=\frac{s^2+b^2-a^2}{2s}
\end{align*}
$s, a^2, b^2$ は有理数であるから $\frac{s^2+b^2-a^2}{2s}$ も有理数。
しかし左辺の $b$ は無理数であるから矛盾。
$\therefore$ 2つの無理数の和が0でない場合、和と積と商のうち少なくとも1つは無理数 $\blacksquare$
※差(0でない)と積と商についても同様に証明できます。
ちなみに2つの無理数の和が0になる場合 ( $\sqrt{2}$ と $-\sqrt{2}$ の組など)は、冒頭で紹介したように和・積・商がいずれも有理数になることがあります。
無理数の和・積のパターン
和 | 積 | |
和・積ともに無理数 | $\sqrt{2}+\sqrt{3}$ | $\sqrt{2}\times\sqrt{3}=\sqrt{6}$ |
和のみ有理数 | $\sqrt{2}+(1-\sqrt{2})=1$ | $\sqrt{2}\times(1-\sqrt{2})=\sqrt{2}-2$ |
積のみ有理数 | $2\sqrt{2}+\sqrt{2} = 3\sqrt{2}$ | $2\sqrt{2}\times\sqrt{2} = 4$ |
和・積ともに有理数 | $(2+\sqrt{2})+(2-\sqrt{2}) = 4$ | $(2+\sqrt{2})\times(2-\sqrt{2}) = 2$ |
全パターンあるので無理数同士の和と積の無理性については何も言えません…。
無理数の積・商のパターン
積 | 商 | |
積・商ともに無理数 | $\sqrt{6}\times\sqrt{2}=2\sqrt{3}$ | $\sqrt{6}\div\sqrt{2}=\sqrt{3}$ |
積のみ有理数 | $\sqrt[3]{4}\times\sqrt[3]{2}=2$ | $\sqrt[3]{4}\div\sqrt[3]{2}=\sqrt[3]{2}$ |
商のみ有理数 | $\sqrt[3]{2}\times\sqrt[3]{2}=\sqrt[3]{4}$ | $\sqrt[3]{2}\div\sqrt[3]{2}=1$ |
積・商ともに有理数 | $\sqrt{2}\times\sqrt{2} = 2$ | $\sqrt{2}\div\sqrt{2} = 1$ |
こちらも全パターンあるので無理数同士の積と商の無理性については何も言えません…。
※
有理数同士なら、「2つの有理数同士の和・差はいずれも有理数」と言えるのに
無理数同士だと、「2つの無理数同士の和・差のうち少なくとも一方は無理数」としか言えない点が制限的です。
無理数同士の四則演算は無理数の範囲内で閉じていないので、無理性を考えるときには取り扱い注意。
無理数の逆数
無理数の逆数は無理数
(証明)
有理数(非0)の逆数は有理数。
よって無理数の逆数が有理数とすると、元の無理数も有理数ということになり矛盾
$\therefore$ 無理数の逆数は無理数 $\blacksquare$
逆数取ったときはちゃんと無理数のままでいてくれるのでありがたい。(当たり前か)
無理数の平方根・累乗根
(正の)無理数の平方根は無理数になります。
(証明)
無理数 $a$ について、 $\sqrt{a}$ が有理数になると仮定すると $\sqrt{a}\times\sqrt{a}$ は有理数同士の積であるため有理数。
しかし $\sqrt{a}\times\sqrt{a} = a$ であり $a$ は無理数であるため矛盾。
$\therefore$ $a$ が無理数のとき $\sqrt{a}$ も無理数 $\blacksquare$
同様に(正の)無理数の累乗根(正整数乗根)は無理数になります。
(証明 A)
$n$ を正の整数とする。
無理数 $a$ について、 $\sqrt[n]{a}$ が有理数になると仮定すると $\left(\sqrt[n]{a}\right)^n$ は有理数同士の積であるため有理数。
しかし $\left(\sqrt[n]{a}\right)^n = a$ であり $a$ は無理数であるため矛盾。
$\therefore$ $a$ が無理数のとき $\sqrt[n]{a}$ も無理数 $(n\in\mathbb {N}_{+})$ $\blacksquare$
このように無理数は累乗根を取っても無理数です。
無理数の有理数乗
$\sqrt[n]{a}=a^\frac{1}{n}$ であるから、先ほどの平方根・累乗根を取る操作は $\frac{1}{2}$ 乗・ $\frac{1}{n}$ 乗することと同じです。
この $\frac{1}{n}$ の分子を $1$ 以外の数に変えた場合、つまり任意の有理数乗にした場合に無理数になるかどうか確認します。
例えば $\frac{4}{2}$ 乗 は $2$ 乗と同じであるため、結局 $(\sqrt{2})^\frac{4}{2} = \sqrt{2}^2=2$ と整数乗のパターンと同じ結果です。
では、分数を整数でない有理数に制限した場合は無理数になってくれるでしょうか。
無理数の "整数でない有理数" 乗は有理数にも無理数にもなりうる
- 有理数になる例 (無理数:$\sqrt[3]{4}$ を 有理数:$\frac{3}{2}$ 乗)
$$\left(\sqrt[3]{4}\right)^\frac{3}{2}=\left(4^\frac{1}{3}\right)^\frac{3}{2}=4^\frac{1}{2}=2$$ - 無理数になる例 (無理数:$\sqrt{2}$ を 有理数:$\frac{3}{2}$ 乗)
$$\left(\sqrt{2}\right)^\frac{3}{2}=\left(2^\frac{1}{2}\right)^\frac{3}{2}=2^\frac{3}{4}=\sqrt[4]{8}$$
無理数を有理数乗したときに必ず無理数になるのは、有理数が整数の逆数である場合に限る
(証明)
・無理数の整数乗の場合 (整数 $1, -1$ は除外)
整数 $n (\neq -1,0,1)$ に対して無理数 $\sqrt[n]{2}$ は 整数乗 ( $n$ 乗) することで有理数2になる。
よって、任意の整数 $n (\neq -1,0,1)$ に対して、$n$ 乗で有理数になるような無理数が存在する。
そして、任意の無理数は $0$ 乗で有理数1になる。
・無理数の 「"整数または整数の逆数" でない有理数」乗の場合
"整数または整数の逆数" でない有理数は、互いに素な整数 $m, n$ を用いて $\frac{n}{m}$ と表せる。
ただし $m, n$ はいずれも $0,\pm 1$ でない。
ここで無理数 $\sqrt[n]{2^m}$ を考える。この無理数を"整数または整数の逆数" でない有理数 $\frac{n}{m}$ で累乗すると
$$\left(\sqrt[n]{2^m}\right)^\frac{n}{m} = \left(2^\frac{m}{n}\right)^\frac{n}{m} = 2$$
となり有理数となる。したがって、任意の「"整数または整数の逆数" でない有理数」乗で有理数になるような無理数が存在する。
以上の場合はいずれも有理数になりうるから、無理数を有理数乗したときに必ず無理数になるのは、本ページの(証明 A)で示した有理数が整数の逆数である場合に限る。 $\blacksquare$
※整数 $1, -1$ はそれ自身が整数の逆数でもあるので「有理数が整数の逆数」の場合の方に入れています。
証明の途中で $\sqrt[n]{2^m}$ が無理数であることを証明なしに用いましたが、その詳しい証明は下記の
[usemath] [sumaho] 目的 無理数同士の加減乗除、累乗根、無理数の無理数乗、有理数乗… など各種演算の結果が無理数になるか有理数になるか、各パターンを網羅してまとめていました。 [sitecard subtitl[…]
に記載していますので、是非ご確認下さい。
無理数を有理数乗したときに確実に無理数になるのは有理数が整数の逆数になっている場合に限られるので、随分制限が強いですね…。
無理数の無理数乗
簡単に確認できる例
無理数の無理数乗はさすがに無理数? と疑問に思いますが、これも実際には有理数になることも無理数になることもあります。
- 有理数になる例 (無理数:$\sqrt{2}$ を 無理数:$\log_{2}{9}$ 乗)
$$\left(\sqrt{2}\right)^{\log_{2}{9}}=2^{\frac{1}{2}\cdot 2\log_{2}{3}}=2^{\log_{2}{3}}=3$$ - 無理数になる例 (無理数:$\sqrt{2}$ を 無理数:$\log_{2}{3}$ 乗)
$$\left(\sqrt{2}\right)^{\log_{2}{3}}=2^{\frac{1}{2}\cdot \log_{2}{3}}=\left(2^{\log_{2}{3}}\right)^\frac{1}{2}=\sqrt{3}$$
なお $\log_{2}{3}$ が無理数であることは、$\log_{2}{3}$ を有理数と仮定して両辺を2の指数に持っていく流れの背理法で簡単に示せます。
有名な例
他にも、無理数の無理数乗が有理数になる例としては以下の例が有名です。
- 有理数になる例 (無理数:$\sqrt{2}^\sqrt{2}$ を 無理数:$\sqrt{2}$ 乗)
$$\left(\sqrt{2}^\sqrt{2}\right)^\sqrt{2} = \sqrt{2}^{\sqrt{2}\times\sqrt{2}} = \sqrt{2}^{2} = 2$$ - 無理数になる例 (無理数:$\sqrt{2}$ を 無理数:$\sqrt{2}$ 乗)
$$\sqrt{2}^\sqrt{2}$$
最初に示した例と違って、こちらの $\sqrt{2}^\sqrt{2}$ が無理数であることを証明するのは非常に難しいみたい(私は自力では証明できない)ですが、数学者ゲルフォントさんとシュナイダーさんが(独立に)証明した定理 ゲルフォント=シュナイダーの定理 を使うと一発で無理数だと分かります。
※後日、定理についてのより詳しい情報をここor別記事に記載する予定です。ちょっと待ってて。
今回は 代数的数 $\sqrt{2}$ の代数的無理数 $\sqrt{2}$ 乗である $\sqrt{2}^\sqrt{2}$ がこの定理により超越数であると分かり、超越数は無理数なので $\sqrt{2}^\sqrt{2}$ が無理数となります。
$\sqrt{2}^\sqrt{2}$ が無理数かどうか知らなくても「無理数の無理数乗が有理数」になる例の存在を示せる
上記の例は、$\sqrt{2}^\sqrt{2}$ が有理数か無理数か分からなくても「無理数の無理数乗が有理数」になる例が存在することを示せる点で有名になっています。
→それ自体が「無理数の無理数乗が有理数」の例になる。
ㅤ
・もし $\sqrt{2}^\sqrt{2}$ が無理数なら
→ $\sqrt{2}^\sqrt{2}$ (無理数) の $\sqrt{2}$ (無理数)乗 を計算すると
$$\left(\sqrt{2}^\sqrt{2}\right)^\sqrt{2} = \sqrt{2}^{\sqrt{2}\times\sqrt{2}} = \sqrt{2}^{2} = 2$$
なので有理数となり、「無理数の無理数乗が有理数」の例になる。以上より、「無理数の無理数乗が有理数」となる例が少なくとも1つ存在する。
有理数の無理数乗
具体例
流れ的に有理数の無理数乗も無理数とは限らないだろう… と感じたかもしれません。こちらも今まで同様、有理数になることも無理数になることもあります。
- 有理数になる例 (有理数:$2$ を 無理数:$\log_{2}{3}$ 乗)
$$2^{\log_{2}{3}}=3$$ - 無理数になる例 (有理数:$2$ を 無理数:$\log_{2}{\sqrt{3}}$ 乗)
$$2^{\log_{2}{\sqrt{3}}}=\sqrt{3}$$※ $\log_{2}{\sqrt{3}} = \frac{1}{2} \log_{2}{3}$ より $\log_{2}{\sqrt{3}}$ は無理数。
以上のまとめ
・無理数の逆数は無理数
・ある2つの無理数の和と差のうち、少なくとも一方は無理数
・ある2つの無理数の和が0でない場合、和と積と商のうち少なくとも1つは無理数
・有理数の無理数乗 は無理数とは限らない
・無理数の無理数乗 は無理数とは限らない
※今後更に情報を追加し、無理数同士の演算をより細かく見ていく予定。