パブリックドメイン(またはCC0ライセンス)の論文が欲しいけど「論文 パブリックドメイン」でGoogle検索しても出てこない、英語で探しても見つからないって方はご覧ください。
とにかく何でもいいから著作権の放棄された論文を数本手に入れたい!って時も以下ですぐ入手できます。
生物医学・生命科学分野の論文
論文アーカイブPMCにパブリックドメイン論文検索フィルターがある
PMC (PubMedCentral) はアメリカ国立医学図書館(NLM)が運営する生命医学・生命科学分野のオンライン論文アーカイブです。
PMCはこの分野の膨大な数の論文をオープンアクセスにしており、論文のフルテキストをインターネットから無料で閲覧できます。
このPMCの検索機能に、パブリックドメインの論文を明示的に指定するオプション(フィルター)があり、パブリックドメインの論文を探している場合は大変重宝します。
フィルター
以下の文字列を検索ボックスに貼り付けてから、検索ワードを入力してください。
※検索例(DNAについて検索):cc0 license[filter] dna
検索ワードにこのフィルター文字列を追加すると、検索でヒットする論文はCC0ライセンス[※]、またはパブリックドメインの論文になります。
ある著作物(論文も含む)にCC0を関連付けた著作権者は、法令上認められる最大限の範囲で権利を放棄しています。
すなわちパブリックドメインの状態にありますが、権利の放棄内容や免責事項(作品について一切の保証をせず、その作品のいかなる利用に関する責任も負わないこと)について「ライセンス」という形で明文化している点が特徴です。
つまり、パブリックドメインを明文化したもの≒CC0です。
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CC0のわかりやすい公式説明は上記青字リンクを、ライセンス本文(リーガルコード)はこちらをご参照ください。
(バージョンを含めて「CC0 1.0」とも表記します)
※厳密にはCC0は「ライセンス」ではなく「権利放棄」なので「CC0」と単体で表記するのが正確ですが、今回は分かりやすさ優先で誤表記を使用しています。すみません。
常にパブリックドメインの論文を検索するならこれをブックマーク!
以下のリンクURLにアクセスすると、検索ボックスにあらかじめ「cc0 license[filter]」が入力された状態でPMCのサイトが表示されます。
ブックマークしておくと便利です。
※PubMedを論文検索に普段使用している方はこちら
PubMedにも同様の検索フィルターがあります。
pmc cc0 license[filter]
を検索ボックスに貼り付けてから、検索ワードを入力してください。
または、上記フィルターがあらかじめ入力された状態でPubMedのサイトが表示されるこちらのリンクをご利用ください。
論文が実際にパブリックドメインか確認する方法
検索結果一覧から論文を選んでクリックすると論文のフルテキストページに飛びます。
著作権やライセンスに関する情報は論文タイトル下にある「Copyright and License information 」に記述されているのでそれをクリックしてください。
以下の画像のように
The work is made available under the Creative Commons CC0 public domain dedication.
とCC0ライセンスであることが明記されていればパブリックドメインです。
(ちなみにこの論文では、合成DNAをデータの記録・伝達媒体として使用するという面白いトピックについて論じられています。気になった方はこちらのリンクからどうぞ。)
論文によっては文章が上記と異なる場合や、CC0ライセンスではなく一般の「Public Domain」として記載している場合があります。(例↓)
All material in the MMWR Series is in the public domain and may be used and reprinted without permission; citation as to source, however, is appreciated.
「MMWRシリーズのすべての資料はパブリックドメインであり、許可なく使用および転載することができます。ただし、出典を明記していただけると幸いです。」
各自で文章内容を確認し、パブリックドメインか否かご判断ください。
わざわざ確認を行っている理由
別サイトの論文では「添付された図表などのデータはパブリックドメインだが論文本文は Creative Commons Attribution 4.0 International License」みたいなパターンがあったので、念のためこちらのサイトでも確認作業自体は怠らないようにしています。
注意事項
パブリックドメインであるという絶対的保証はない
論文に掲載されているライセンス情報は、その論文の発行者によって提供されたものです。
発行者の勘違いにより第三者が著作権を有する図表が添付されているなどの可能性もあるので「100%絶対にパブリックドメイン」という訳ではない点にご注意ください。
(法的な要請とは別に) 出典の表示が望ましい
機械学習用データ/文字遊びデータとして論文の文章を使用する場合やただの画像素材として論文を用いる場合は出典表示の必要性が無いですが、論文の内容そのものに言及する場合は出典の表示が望ましいです。
CC0ライセンスの作品には氏名などのクレジット表記は不要で 無くても法的な問題は無いのですが、それとは全く別に (論文の性質上) 出典表記が無いと(正確性/信頼性の観点で)問題が生じます。
例えば論文で示されたデータと考察を自説文章に取り込む場合は、きちんと引用元を記さないと第三者がその情報を検証することができません。
論文を情報源として利用する場合は(論文のライセンス形態に関係なく)どのみち出典を表示することになります。
他の分野の論文
※現在検索手段を探しています…。
もしパブリックドメインやCC0ライセンスの論文を検索できる各分野のプラットフォームをご存知の方がいらっしゃいましたらコメント欄で教えて頂けると大変助かります。
本記事の下の方に私の方でまだ確認していないパブリックドメインソースをまとめています。
パブリックドメイン論文の使い道
パブリックドメインの論文は著作権の壁に阻まれることなく学習や教育、趣味に利用できる大いなメリットがあります。
従来の著作権を放棄していない論文に比べて利用のために必要な作業が大幅に削減されるため、著作権が理由で今まで不可能だったことも可能になり自由が生まれます。
論文(研究内容)のシェア
普段論文を読んでいて次のように感じる機会が多い場合は、パブリックドメインの論文を本当にありがたく感じると思います。
…でも表記は英語だし内容も専門外だと分かりにくいし、、、
一部を翻訳して図や本文に注釈を加えて分かりやすくした状態でみんなに紹介したいけど、著作権侵害になるから無理だ…
パブリックドメインの論文なら、一般の方に説明するために論文中の図表に注釈を加えて翻案したものをSNS上でシェアすることが可能になります。
Twitterで論文内容を紹介するために論文をスクショする場合も140字の文字数制限の関係上、論文が「主」でツイート本文が「従」となってしまい引用の主従関係を満たせず著作権侵害ツイートになってしまう問題も回避できます。
特に活用できるシチュエーションとしては、SNS上の不特定多数で論文紹介(ゼミ)のようなことをやるような場合です。
注意
自由に図表や内容を翻案できるということは、元の論文に不正確な編集・変更が加えられる可能性が高くなることを意味します。
研究を気軽にシェアすることは可能になりますが、研究の内容を正確に把握するためには元の論文を参照する必要があります。
パブリックドメイン論文を翻案して投稿する際は、読者が元の論文にアクセスできるように出典を必ず明記するよう気をつけたいです。
※論文を引用する際に使用する一般的な表記方法に従って引用元を記載すると良いと思います。
学習目的
例えば論文を読んでいて疑問点があった時、「その部分をスクショしてその分野に詳しい友人に送り、一緒に考えてもらう」ようなことが可能になります。
- (オンラインにて)数人の友人同士で同じ論文を一緒に読み、気になったところに書き込みを行うなどした資料を共有しながらディスカッション
- ネット上の学習サークルでオンラインゼミ
- 特定トピックの教材に、そのトピックに関連したパブリックドメイン論文も取り込み論文の読み方や論文中で使われている理論/手技について教材で解説
といった方法で使用できるようになるため、学習を円滑に進められ便利です。
「学校その他の教育機関における複製等(著作権法第35条)」に当てはまらない場合でも論文の複製や翻案 (例: 論文の図表を切り貼りして作ったゼミ資料の共有など) ができるので学習の幅が広がります。
(逆に考えると、学校は学習のため著作物の利用制限がある程度緩くなっている貴重な場所ですね。在学中はせっかくの学習の機会を無駄にしないように!)
その他
- テキストマイニング
- 綺麗な図の作り方を真似する
実はパブリックドメインじゃなくても可能なこと
上記で上げたメリットの一部は、パブリックドメインやCC0ライセンスでなくても実現する場合があります。
例えばCC0ではなくCC BY 4.0 (Creative Commons Attribution 4.0 International License) ライセンスが付与された論文では、適切なクレジット表示やライセンスへのリンク提供、変更した旨の記載などの条件に従いさえすれば論文の共有や翻案が可能です。
パブリックドメインの論文に比べると相当面倒にはなりますが学習に活用することができます。
PMCで各Creative Commonsライセンスの論文を絞り込むには以下の公式サイト中で説明されているフィルターをご利用ください。
リンク:How do I search for articles by Creative Commons license?
PMC以外でも、例えば SpringerOpen というサイトでオープンアクセスの論文を検索できます。(検索はサイト最上部のSearchボタンから)
(実際のライセンスはCC BY 4.0だったりそれ以外だったり物による)
※「オープンアクセス」という言葉は「インターネットを通じて誰でも無料で論文にアクセスできる」ぐらいの意味なので、その論文が再利用可能であることを必ずしも意味しません。
他のパブリックドメイン論文探索手段
未確認サイト一覧
PUBLIC DOMAIN E-RESOURCES
http://crl.du.ac.in/Public%20dom.%20e-resources.htm
プレプリントなら…
プレプリントの場合、健康科学分野ならmedRxiv、生物学分野ならbioRxivでCC0ライセンスの下で公開されたプリントが掲載されていることがあります。
ライセンスは各論文のAbstract表示ページ下部にあるCopyrightのところに記載されています。
例えばCC0ならこんな感じの文章でした。
The copyright holder for this preprint is the author/funder, who has granted medRxiv a license to display the preprint in perpetuity. This article is a US Government work. It is not subject to copyright under 17 USC 105 and is also made available for use under a CC0 license.
フィルター検索の有無・方法については確認していませんが、Google検索で上の文章をまるごと検索にかけるとmedRxivに投稿されたCC0プレプリントがヒットします。
(bioRxivで探したいなら太字下線部をbioRxivに変更)
その他メモ情報と感想
メモ
博士論文を査読してもらいつつパブリックドメイン(CC0)でリリースしたい方が方法を質問しているところ。
リンク:How to publish under a Creative Commons license?
感想(というか余談)
「論文 パブリックドメイン」で調べてもパブリックドメインな論文が全然ヒットしないので結構困った。
PDF中の文章を複数行コピーすると無駄な改行が含まれる という現象を画像つきで説明するために適当なパブリックドメインの論文を1本持ってきてそれをスクショしようと思ったら探すのに時間がかかってしまった…ฅ
パブリックドメインの論文は本当にありがたいです。
私も(論文ではないけど)サイト記事でライセンス緩められるところは緩めて再利用しやすいようにしていこうと感じています。