2の整数でない有理数乗は無理数【証明】

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目的

無理数同士の加減乗除、累乗根、無理数の無理数乗、有理数乗… など各種演算の結果が無理数になるか有理数になるか、各パターンを網羅してまとめていました。

無理数演算の無理性一覧

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無理数の無理数乗は無理数か

その際に2の整数でない有理数乗が無理数であることを利用した証明を行ったので、こちらできちんと示しておこうと思い証明を書きました。

間違いがないように確認はしたつもりですが、もし内容に誤りがあれば教えていただけるとありがたいです。
(コメント欄でも私のtwitterアカウントでも大丈夫です。)

証明

2の整数でない有理数乗が無理数であることをまとめて示したかったので、ここで記載。

背理法で有理数と仮定し、両辺の2で割り切れる回数が一致する(素因数分解の一意性より)ことから最終的に矛盾を導くおなじみの方法で証明しています。

※ただの「有理数乗」だと2乗や3乗など整数乗も含まれてしまうので、「整数でない有理数乗」に限定。

2021/5/1 追記:正の有理数乗の場合しか証明できていなかったので、負の有理数乗の場合も追加。

(証明)

整数でない正の有理数を、互いに素な正整数 $m, n$ を用いて $\frac{n}{m}$ と表す。 $(m\neq 1)$
$2^\frac{n}{m}$  が有理数であると仮定する。
このとき,互いに素な正の整数 $p, q$ を用いて $2^\frac{n}{m} = \frac{q}{p}$ とおける。
両辺に $p$ をかけて $m$ 乗して
$$2^n \cdot p^m = q^m$$
左辺は $2$ の倍数なので $q^m$ は $2$ の倍数。よって $q$ は $2$ の倍数。したがって $q^m$ は $2^m$ の倍数となる。
一方で、 $p, q$ は互いに素だから、$p$ は $2$ の倍数でない。
よって、
ㅤㅤ左辺が $2$ で割り切れる回数:$n$ 回
ㅤㅤ右辺が $2$ で割り切れる回数:$km$ 回 ( $k$ は正整数)
これが等しいから
$$n=km$$
これにより $n$ は $m$ の倍数となるが、$m$ と $n$ が互いに素であることに矛盾。

$\therefore$   $2^\frac{n}{m}$ は無理数。

整数でない負の有理数乗 $2^{- \frac{n}{m}}$ の場合、その逆数  $2^\frac{n}{m}$ が上証明により無理数であるから元の $2^{- \frac{n}{m}}$ も無理数。
以上より、$2$ の整数でない有理数乗 は 無理数。   $\blacksquare$

ちなみに $m=1$ のときはこの証明は成立しないはずです。それも確認。

この証明では最後に $m$ と $n$ が互いに素であることに矛盾することを示す流れですが、$m=1$ のときは $n$ は $m$ と互いに素なので矛盾が生じず仮定を否定できません。

(任意の整数は1の倍数だが、任意の整数は1と互いに素)
(※互いに素…二数の最大公約数が1)

ということで、確かに $m=1$ では成立しないことも確認できました。

この方法で、2以外の素数についても同様に証明が可能なはずです。

無理数の例

以上の証明より、例えば以下のような数が無理数であると分かります。

$$\sqrt{2} = 2^\frac{1}{2},  \sqrt[3]{2} = 2^\frac{1}{3},  \sqrt[7]{16} = 2^\frac{4}{7},  \sqrt[100]{128} = 2^\frac{7}{100}$$

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