ニュースになっている研究の元論文を探す手順

ニュースで「○○という研究結果を△△の研究チームが発表した」という文言が流れてその研究結果について詳細を見たいと思っても、肝心な論文や一般向けプレスリリースがどこにあるのか分からない… みたいなことが起こりがちなので探す手順をまとめました。

今回は実際の一つの研究結果発表ニュースから、その研究の元情報にたどり着くまでの流れを実際の手順とともに説明します。

ニュースから論文・プレスリリースまでの道のり

断片的な情報しかないニュース

今回見かけた研究結果発表ニュースはこちらです。(2022年6月8日)

記事名:「休日夜更かし、2時間目安 超えると睡眠の質低下」

ライブドアニュース

平日と休日の睡眠時間帯のずれに関する調査結果が、国際科学誌で発表された。2時間を超えると、睡眠の質の低下や日中の眠気につ…

※↑がリンク切れの場合はこちらの魚拓を参照

ニュースサイトにアクセスすると研究の概要について300字未満の短い文章でざっと記載されています。

もっと詳しい内容が知りたいのですがニュース記事中にはこのニュースの元情報である論文やプレスリリースへのリンクが一切張られていません…。

(Webなら紙面サイズに制限など無いのだから情報源のURLぐらいちゃんと載せてほしい…)

それではこれから、この限られた情報を基に当該研究の論文を探してみます。

※今回取り上げた研究についてはこちらで一切の確認を行っていないため研究内容については触れません。たまたま今日ニュースになっていた研究を題材にしただけです!

 

当該研究チームの研究室Webサイトを探す

ニュースのタイトルや本文中のキーワードで検索をかけても別のニュースばかりがヒットし肝心な論文にはたどり着けないことがほとんどです。

特にニュース当日は、検索結果一覧で大学のプレスリリース文書よりも各ニュースサイトの記事が上位に表示されるので公式情報が検索結果に出ないことも…。

代わりに当該研究チームのWebサイトをまず探し、そのサイトの研究成果ページから論文やプレスリリースに移動するのが一つの手です。

実際にやってみます。

研究室名or研究者名を探す

ニュース本文には「京都府立医大のチーム」という記載があります。

せめて大学名だけじゃなくて○○研究室って名称まで出してくれればいいのに…。

他のニュースサイトで研究室名(または研究者名)までちゃんと記載しているところを探します。

大学名とニュースタイトルの一部を合わせて検索をかけ、同じニュースを取り扱った別サイトを見てみます。

例えば以下のワードでGoogle検索。

京都府立医大 休日の夜更かし

これで研究結果発表ニュース記事が複数ヒットするので、最初に見たニュースサイトとは別会社(別系列)のサイトを見て探します。

研究室名研究者名のどちらかが載っているニュース記事を見つければOKです。(検索結果に直接研究室サイトが出れば最高だけどニュース発表直後は厳しい)

研究室名のバリエーションは主に次の通りです。

  • ○○研究室
  • ○○教室
  • ○○分野
  • ○○講座

 

今回はこちらの記事で研究者名が記載されているのが見つかりました。

※↑がリンク切れの場合はこちらの魚拓を参照

「八木田和弘教授」という記載を見つけられました!

研究室のページに移動する

研究室名が分かった場合は「大学名 研究室名」で検索をかければその研究室のサイトがすぐ出てきます。

研究者名が分かっている場合も同様に「大学名 研究者名」または「大学名 研究者名 研究室」と検索すれば結果に出てくるはずです。

今回の場合なら以下のワードで検索。

京都府立医科大学 八木田和弘

検索結果に出てきました。「統合生理学/生理学教室」みたいですね。

それではそのサイトに移動します。

 

当該論文やプレスリリースへのリンクを探す

「大学名 研究者名」で検索をかけてヒットしたページは研究室のトップページではなく研究者プロフィールページであることがよくあります。

まずはプロフィールページから研究室サイト(ホームページ)に移動します。

※今回のページならページ上部の「統合生理学HP https://yagita-lab.jp/」のところから移動可能。

研究室ホームページのトップ画面に移動したら、以下の場所に最新の研究結果報告について記載がないか見てみます。

  1. 「お知らせ」の一覧
    ↑ニュース日付に近い日付で論文についてお知らせが無いか確認
  2. 「研究業績」ページ

①に「○○教授の論文が△△に掲載されました」みたいなニュースが無いか探してみてください。(ニュース直近の日付)

もし無ければ②の「研究業績」ページに最新の論文タイトルが掲載されているかもしれません。

ちなみに今回は(ニュース発表当時)、お知らせの欄に「笹脇ゆふ助教の論文が、ヨーロッパ睡眠学会国際学術雑誌 “Journal of Sleep Research” に掲載されました。おめでとうございます!」とありました。

これが探していたものです!

 

お知らせから上記ページに移動しました。論文名は書いていないのでとりあえずまずはプレスリリースを見てみます。

 

プレスリリースを確認

リンク:プレスリリース

プレスリリースでは日本語で当該研究の概要について分かりやすく記載されています

ニュースでは分からなかった情報が得られるので、研究についてまず概要をざっと見たいならプレスリリースの確認がおすすめです

そもそもニュース記事はこのプレスリリース文書を基に作られていることが多いと思います。

 

論文を確認

プレスリリース文書中に論文情報も記載されています。

掲載誌情報(論文がどの学術誌に掲載されているか、あるいは掲載される予定か) と、論文情報(論文タイトルや著者) が記載されているはずです。

 

今回のプレスリリースでは【論文基礎情報】の項目に掲載誌情報と論文情報が掲載されていました。

「オンライン閲覧 DOI: https://doi.org/10.1111/jsr.13661」のところから当該論文に移動できます。

これでやっと探していた論文が見つかりました!

(論文が見つかってもその分野・研究の前提知識が無いと内容の検証どころかちゃんと読むことすら大変or不可能だと思いますが、とりあえず元情報にたどり着く手段を知っておくのは有用だと思います。)

 

報道(ニュースサイト)にお願いしたいこと

報道内容の情報源を可能な限り掲載してほしいです。(切実)

もちろん実際には何か事情があり敢えて情報源へのリンクを掲載していないのかもしれませんが、支障なければ可能な限り情報源へのリンクURLを掲載してほしいと感じます。

テレビ番組や新聞では尺や紙面の都合上 出典を明記するのが難しいですが、Web上のニュース記事であれば紙面に制限など無くURLの掲載は容易です。

例えば今回のような研究結果発表ニュースの場合、ニュース記事中にプレスリリースへのリンクや論文タイトル・著者などが掲載されていると元情報へのアクセスが非常に簡単になります。

情報源の掲載というほんの一手間でニュース閲覧者の余計な手間が大幅に減り利便性や情報の検証可能性が高まります。

気になるニュースを見かけるたびに記事中の断片的な情報から毎回情報源を探し回る余計な手間から読者が解放される日がいつか訪れますように…。

(研究結果ニュースに限らず、例えば「○○アンケートで△△という傾向が明らかに」という報道なら当該アンケート実施機関のプレスリリース文書へ、「□□機関の報告によると…」なら当該機関の報告内容説明ページへリンクを張るなど情報源へのアクセシビリティが向上してほしい…!)

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