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Twitter で不定方程式に関して次のような問題(疑問)を見かけたので、考えてみました。
x^2-2y^2=1
の整数解が無数にある←知ってる(x,y)=(奇数、偶数)となる解も無数にある?
とある問題考えていて気になりました。
— 池 数人 (@ike_su_jin) July 20, 2023
$$x^2-2y^2=1$$
について、$(x,y)=(奇数, 偶数)$ となる解は無数に存在するか?
与えられた不定方程式はペル方程式の最もよく見かける例で、整数解が無数に存在することや解の具体的な構成方法が知られています。
今回、$(x,y)=(奇数、偶数)$ となる解も同様に無数に存在することを示してみます。
証明
ペル方程式
$$x^2-2y^2=1$$
について、$(x,y)=(奇数、偶数)$ となる解を考える。
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$y=2z$ とおくと、方程式は
$$x^2-8z^2=1$$
の形のペル方程式に帰着する。
(両辺を $2$ で割った余りを考えると、この整数方程式が解を持つのならば $x$ は奇数である。)
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ここで、$\text{Brahmagupta}$ の恒等式
$$\left(a^{2}+nb^{2}\right)\left(c^{2}+nd^{2}\right)=\left(ac-nbd\right)^{2}+n\left(ad+bc\right)^{2} $$
について、$a=c=x, \ b=d=z, \ n=-8$ として書き換えると
$$\left(x^{2}-8z^{2}\right)^2=\left(x^{2}+8z^{2}\right)^{2}-8\cdot\left(2xz\right)^{2}$$
となり、$x^2-8z^2=1$ を満たす解を $(x,z)=(x_1,z_1)$ としたとき
$$(x,z)=({x_1}^2+8{z_1}^2,2x_1z_1)$$
も解であることが分かる。
方程式は解 $(x_1,z_1)=(3,1) $ を持つため、解を再帰的に代入することで無数に解を得られる。
以上より $x^2-8z^2=1$ は無数に解を持つため、元の方程式は $(x,y)=(奇数、偶数)$ となる 解を無数にもつ。■
補足
ペル方程式 $x^2-nz^2=1$ の解が無数に存在することは、以下の Brahmagupta の恒等式 (Brahmagupta's identity)を用いれば簡単に示すことができます。
$a=c \ (\rightarrow x), \ b=d \ (\rightarrow z), n \ \rightarrow -n$ と文字を書き換えて変形すると、
$$\left(x^{2}-nz^{2}\right)^2=\left(x^{2}+nz^{2}\right)^{2}-n\left(2xz\right)^{2}$$
となり、これは $x^{2}+nz^{2} = X, \ 2xz =Z$ とおくと
$$X^2-nZ^2 = \left(x^{2}-nz^{2}\right)^2$$
の形になります。
上の式の両辺を見比べると、同じ形 (再帰的な形) になっており、もし $x^2-nz^2=1$ を満たす $x, z$ があるのならば
$$X^2-nZ^2 = 1$$
が成り立ち、$X=x^{2}+nz^{2}, \ Z=2xz$ が考えているペル方程式の新たな解になることが分かります。
得られた $X,Z$ を再度代入すると次の新たな解が得られ、このように解を再帰的に代入することで無数に解を得られることからペル方程式が解を無数に持つが分かります。
あとは実際に $x^2-nz^2=1$ を満たす $x, z$ を一つ見つければOKです。
$n$ によっては $x, z$ の最小解がやたら大きいこともありますが…。
※例:$n=61$ のとき、$(x,z)=(1766319049, 226153980)$
※ Brahmagupta について
Brahmagupta は7世紀に活躍したインドの数学者です。カタカナ表記には揺れがあり「ブラーマグプタ」または「ブラフマグプタ」と表記されているのをよく見かけます。